公営住宅は、令和3年度末時点で全国に210万戸余りあり、耐用年数30年の木造物件を中心に、老朽化した建物の撤去工事が進められています。
国は自治体に交付金を支出して工事費用の半分を支援していますが、会計検査院が令和4年度までの5年間に行われた公営住宅の撤去工事を調べたところ、12の府と県の合わせて805戸の工事で、不適切な形で交付金が使わていたことがわかったということです。
具体的には、部屋の少なさや狭さを補うため、無断で建物の外壁の一部を壊し庭やベランダまで部屋を拡張するなどしたケースで、無断建築物が確認された物件の78%が、入居者が費用を負担して原状回復するようにという通知に反して交付金の対象となり、合わせて5910万円余りが余分に支出されていました。
このうち大阪府内の自治体は、撤去した35戸のうち34戸で交付金を使っていて、担当者はNHKの取材に対し「取り壊す際には居住者が変わっていて無断増築部分の原状回復を求められないケースも多く、国や府の了解を得たうえで交付金を利用した」と話しています。
会計検査院は、国土交通省に対し、交付金の不適切な支出を防ぐため、無断増築物の撤去費用は交付金の対象外だと全国の自治体に周知するよう求めました。
国土交通省は「指摘を真摯(しんし)に受け止め、自治体に周知していきたい」としています。